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名古屋高等裁判所 昭和40年(ネ)903号 判決 1967年3月15日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」旨の判決を求め、

被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述および立証関係は次に付加するほか原判決事実摘示と同一であるからこれをここに引用する。

第一、被控訴代理人の陳述

予備的請求の原因。控訴組合で販売した木炭代金貸倒れの欠損を補填するため前組合長当時、同組合長および参事の田合が組合の余裕金を第三者を通じて高利に廻し利を得て穴埋めをしようと考え、余裕金の運営をしていたのであるが、現組合長に変る際、現組合長に右事情を引継ぐことなく、旧組合長と参事の田合の話合に基き秘密裡に事を継続した結果、本件手形行為がなされたもので、これは参事の田合が控訴組合の事業に関しなしたものであるから、控訴組合は民法第七一五条の使用者責任を有する。

第二、控訴代理人の陳述

被控訴人の予備的請求原因について。本件の手形偽造行為は訴外武岡郁夫の奸策に訴外田合又一、同熊本美正の両名が共謀して、不当支出の組合の金七〇〇万円の回収のために手形の偽造並びにその行使を敢行したものであつて、正当なる組合業務の執行に関しなされたものでない。

第三、立証関係(省略)

理由

当裁判所の裁判は次に付加するほか原判決に説示するところと同一であるから原判決理由記載をここに引用する。成立に争のない乙第五号証ないし第九号証の各記載および当審証人熊本美正の証言をもつてしても右心証を覆えしえない。

控訴人の指摘する判例(最高裁判所昭和三二年(オ)第六二〇号同三六年十二月十二日第三小法廷判決)は代理人が権限を喩越して約束手形を振出した事案に関するものであり、本件のごとき一般的に手形振出の権限を有する農業協同組合参事が約束手形を振出した事案については適切ではない。

よつて、右と同趣旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却すべく、控訴費用について民事訴訟法第九五条第八九条を適用して主文のとおり判決する。

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